2度目のイワナ稚魚放流とビワマスの稚魚
今年2度目のイワナ稚魚放流に行きました。今シーズン、私が放流に参加できるのは今回で終わり。今日はどんな谷を割り当てられるのでしょうか・・・
私の膝が悪いことを知ってくれているためか、今回は比較的楽な谷に行ってこいと言っていただきました。車で林道終点まで行き、そこから少し谷を上がれば良いということで、これは帰りに釣りをする時間があるかも、と期待して行きます。
ところが、林道が途中で崩落していました。だいぶ前に崩落したようですが、まあ地図によるとここから少し歩けば林道終点ですので、ここに車を置いて、稚魚をかついで行きましょう。
この谷は、崩れやすいためか砂防堰堤がとても多い!堰堤を越えると、もう次の堰堤が見えるほどです。でも、堰堤を迂回する踏み分け道もあって、特に困難もなく上がっていけました。
さあ、そろそろ放流地点です。持ち歩いた時間も短く、当然イワナの稚魚はみんな元気。数カ所にわけて放流しました。
こちら、放流してしばらく経った稚魚の様子。流れのゆるいところでじっとしています。イワナの稚魚は、写真に撮るといつも少し紫がかって見えます。大きく育ってください!
さて、せっかく早く終わったので竿を出します。放流現場より少し上に上がると、どんどん水は減ってきますが、場所によっては「いるかも?」というポイントがありましたので、毛鉤を入れてみました。
おっと!いたけど、小さな11cm!たぶん昨年の放流魚が無事に育ったのでしょうね。そっとリリース。
さらに堰堤を越えていくと、ちょっと良い渓相になってきました。良さそうなポイントに次々と毛鉤を入れていますが、これがまったく反応なし。林道も近いので、ほとんど釣られてしまっているのかもしれません。
仕方なく、引き返すことにしました。
堰堤を迂回して上るときには、堰堤下をのぞく余裕がなかったのですが、下りるときに堰堤の上からそっとのぞいてみると・・・
おお、堰堤下の溜まりにイワナがいるじゃないですか!
上の写真は、その堰堤を下から撮影した様子ですが、堰堤の上から見下ろすと、少なくとも3匹の魚影が動いています。
さあ、どうしようか。イワナに気付かれないよう、そ~っと堰堤の横を下りて行き、下流から改めてアプローチするか・・・しかし、下流からアプローチしようにも、ここは身を隠す場所がありません。私のテンカラ竿は3.3m。予備に3.6mも携行していますが、この竿ではよほど近寄らないとポイントに届きません。そして、身を隠しようのないこのような場所では、気付かれるとすぐにイワナは隠れてしまいます。
う~ん、でもそこに姿が見えているのに・・・この堰堤の高さは8~10mくらい?携行した3.6mの竿に、長尺用のライン+ハリスの長さ6m余りを足すと約9.6m。堰堤の上から手を伸ばしながら竿を真下に持てば、ぎりぎり届く・・・かな?
やったことないですが、どうせダメ元、堰堤の上から毛鉤を垂らすことにしました。この日は風が強かったので、できるだけまっすぐ毛鉤を垂らせるよう、大きく重い毛鉤を選びます。
タングステンのビーズヘッドを付けた、#10のバーブレス。巻いている糸はシルバーで、これは釣具屋に売っている、竿を装飾するために巻く糸です。堰堤から小さな魚が落ちてきたぞ!というシチュエーションに見えるように・・・
早速、堰堤の上から毛鉤を真下に降ろし、竿を持つ手を思いっきり伸ばします。8~10mも先になるとこの毛鉤の行方もよく見えませんが、どうやら水面には届いていそうです。そこで、魚が上からポチャンと落ちてきたように竿をアクションすると・・・
おっ!釣れました!堰堤下から上まで魚を引き上げるのは初めてです。計測すると、17.5cmありました。立派なイワナです。今日も持ち帰る予定はなかったので、イワナが自力では超えられないこの堰堤の上に放流しました。
堰堤下の溜まりには、これよりも大きなイワナがいたので、再度挑戦しますが、さすがにもうみんな隠れてしまったようです。
この後も、釣り下がりながら谷を下りて行きますが、まったく反応なし。まあ、釣れただけ良しとしましょう。
山では、フサザクラが咲き始めていました。いわゆるサクラの仲間ではありません。フサザクラは、荒れた急斜面などによく生えていますね。
この日は早々に放流を終え、山を下りました。
時間があったので、少し寄り道してから帰ろう。今回イワナを放流したのは愛知川の上流域(源流域)ですが、流程が40km以上(支流を入れると50km以上)ある愛知川では、上流、中流、下流それぞれに適した魚がすんでいます。
そこで、帰り道に中流域に立ち寄ってみました。なぜなら・・・
琵琶湖固有種のビワマス!もちろん、今の時期の写真ではありませんよ。この写真は、昨年の10月下旬に中流域で撮影した様子。産卵のために、琵琶湖から遡上してきているところです。滋賀県内の多くの河川では、ビワマスは河口から5km程度さかのぼったところで産卵するようですが、愛知川は途中に大きな堰堤など遡上の障害物がないためか、ここは河口から約30km!もあがったところです。
30kmと言えば、車でも1時間近くかかりますよ。こんなに遠くまで遡上して産卵するなんて、もう本当に感動します。昨年の産卵シーズンには、このビワマスの産卵環境の観察会を実施しました。
上の写真は、観察会当日に撮影した1枚。産卵後に力尽き、命を終えたビワマスです。産卵床を掘るために、尾びれはすっかりすり切れています。この死体は、いろいろな生き物の餌となって、つながっていきます。
で、この日、見に行った場所は、この観察会を実施した場所。無事に孵化していれば、今頃ビワマスの稚魚が見られるかも・・・と思ってのぞきに行きました。すると!
いや~!もう感動です!たくさんのビワマス稚魚が、流れに負けずたくましく泳いでいました!
この地域では、ビワマスのことをアメノウオと呼びます。「雨の魚」の名の通り、晩春~梅雨時期にまとまった雨が降ったときに、一気に琵琶湖まで下降するのです。
そして、琵琶湖の深い所(水温が低い所)を回遊しながら、アナンデールヨコエビやアユをたくさん食べて大きくなり、3年くらいすると産卵のために川を遡上してきます。
イワナは性成熟して産卵しても、また次の年も産卵できますが、ビワマスは性成熟して一度産卵すれば、それで死んでしまいます。自分が生まれた川に戻ってくるという「母川回帰」は、証明されていないようですが、どの川に上がるにせよ、再び川を上って産卵しに来て、次の命をつないでいくというドラマには、やはり感動しますね。