Forest and River

森のこと、川のこと

2019漁期終了

9月30日、渓流魚の漁期が終了しました。

昨年から師もいない中でテンカラを始めたわけですが、一昨年に一度だけ、信州で渓流釣りガイドをされているかたからイワナ釣りの手ほどきを受けました。その時は、自分が渓流釣りをするつもりで手ほどきを受けたわけではなく、仕事の上で、プロのガイディングというものを勉強しに行っただけです。 後になって、その時のイワナ釣り方がテンカラというものだった、と知ったというレベルでした。

テンカラは、毛鉤と糸と竿があれば始められるという手軽さも手伝って、昨年からちょっとやってみようかな〜という程度で始めたのですが、もうすっかりはまってしまいました。

昨シーズンは26回釣行し、12cmのおチビさんイワナやアマゴを含めても、17匹しか釣れませんでした。しかし、それでも楽しかった。シーズンが終わってからも、イワナのペアリングの様子を観察しに数回谷に入り、山奥の渓流でペアになって泳ぐイワナの姿に感動したものです。テンカラは、というより、魚のいる渓流を歩くことは、とても楽しいものでした。

その楽しさは今年も健在で、毎回ワクワクしながら渓流に行きました。そんなテンカラ2シーズン目の最終日である9月30日。ああ、今日で最終日だと思いながら、竿を振りに行きました。

 

最終日、どの谷に行こうかな・・・と考えた結果、今まで行ったことがない場所まで行くことにしました。最終日に釣果0というのは寂しいので、初めての谷に入るのは賭けのようなものでしたが・・・

入った谷そのものは、今まで何度も入っていて、釣果もそれなりにあった谷なのですが、今回の目的地はその谷の奥にある支流で、そこは初めて。

まずは、その支流に至るまでの場所で竿を振ります。

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そしたら、やっぱり釣れた!支流に入るまでの区間で、13cm、14cm、16cm、16cm、15cm、16cm、18cmの7匹を釣ることができました。上の写真は4匹目に釣った16cmです。 いずれも小ぶりですが、やっぱりイワナに出会えるのはうれしい!みんなその場にリリースしました。

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さて、この滝より上が未知の領域。過去に、この滝までは何度か来ているのですが、毎回この滝に到達するまでに結構な時間を使ってしまうので、滝の上に出るためのルートを見つける余裕がなかったのです。

今回は、滝まで比較的飛ばしながら上ってきました。それなのに7匹も釣れているので、自分としてはこの時点で結構満足。「最終日、釣れないことには帰れない」というプレッシャーがなくなったので、心にも余裕ができました。

滝の上に出るために、じっくり観察してルートを探します。かなり手前に引き返して大きく迂回すれば、滝の上に到達できるとは思うのですが、戻るのも面倒だし、できるだけこの場所から上りたいと思うのが本心。滝に向かって右側の斜面を直登すれば、行けなくはなさそう・・・よし!

とりあえず、下から見定めたルートを目標に直登し始めます。しかし、斜面に取り付いてみると思った以上に険しい。上れば上るほど、ルートの選択肢がなくなってきます。今まで滝を巻いてきた中でも、一番身の危険を感じました。斜面にとりつきながら、手と足の位置を何度も変え、上る方向も行きつ戻りつしながら進みます。

私は、ロッククライミングボルダリングにはあまり興味もなく、やってみようとも思いません。まして、命綱に頼らないフリークライミングなんてよくやるなあ・・・と感心してしまいますが、滝の横を上りながら、ふと「これって命綱無しの登攀だよなあ」と気付きました。フリークライミングなどは、相応のクライミング技術を持った人が、専用のシューズを履いて、携行する荷物も最小限で、いざという時に安全確保してくれる仲間もいますが、渓流釣りで滝の上に出ようとする時は、渓流用の靴で、竿や予備の道具類や雨具や食糧などを入れた山登りザックをかついで、命綱なしで、私の場合は1人で、おまけに膝が悪いまま上っているわけですから、フリークライミングされている方から言わせれば、私の方がよほど「馬鹿じゃないの!」の思われるのだろうなあ・・・しかも魚のために!

まあ、テンカラにはそれくらい魅力があるのだということにしておきましょう。

やがて、四苦八苦しながらも、何とか滝の上に出ることができました。しかし、このルートは二度と上るまい・・・それくらいリスクの高いルートだったので、帰りはいさぎよく遠回りして下りることにします。 

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そして、滝の上の様子。う~んかなり崩落していますね。一応、水は流れていたのですが、これだけ荒れた様子だと、ダメかもしれないなあ。 

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谷を上がっていくと、ヒラヒラと舞う大型の蝶の群れに出会いました。アサギマダラです!羽を開いた写真を撮れなかったのが残念ですが、浅葱色の美しい蝶。この色と、優雅に飛ぶ姿だけでも魅力的な蝶ですが、この蝶に関して語られることが多いのは、やはり「渡りをする蝶」だということ。秋に、沖縄や台湾、あるいはそれ以上の場所まで、何と2,000km以上も旅をする蝶だからです。

今回出会った山中では、少し開けた場所を飛び回っていましたが、渡りの途中の休憩場所なのか、しばらくここで避暑をしていたのかは分かりません。ただ、後日もう一度出会いたいと思って出かけても、まず出会うことは無理でしょうね。幸運だったとしか言いようがありません。 

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ところで、滝の上にも魚はいるのだろうか・・・少し心配でしたが、歩いて行くと、時折サッと水中を走る姿が見えたので、一安心。よし、竿を出して、丁寧に毛鉤を入れていこう。

水量は少ないですが、小さな流れや落ち込みにも毛鉤を入れていくと・・・ 

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やった!釣れました!

ちなみに先に結果を書くと、滝の上では19cmと16cmの2匹が釣れました。上の写真は、最後に釣った9匹目の16cmです。なぜ19cmのイワナの写真を出さないのか・・・記事を最後まで読んでいただければ分かります。

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16cmを釣った後もどんどん上って行くと、だんだん水が少なくなってきました。もうこの先はイワナはいないだろうと思いつつも、いや、もしかしたら思いがけない落ち込みがあるかもと思ってしまうので、さらに上って行ってしまいます。 

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しかし、ついに水が無くなりました。テンカラをしていて、源頭部まで到達したのは初めてのことです。ここは増水すれば川になるのでしょうが、この時は一滴の水も無し。谷を歩いているのに、まったく水の音がしないのは初めての経験で、とても不思議な感じがしました。

テンカラ2シーズン目も、ついにここで終了~!

最終日に9匹も釣れたので、とても気分良く竿をたたむことができました。 

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上ってきた谷を下ります。落葉広葉樹の美しい谷を下りながら、今シーズンを振り返ってみました。

今シーズンは、愛知川水系の16の谷に入り、27回釣行しました。滋賀県では、全長12cm以下のイワナは採捕禁止です。基本的に私はリリース派なので、サイズは関係ないと言えば関係ないのですが、今シーズンは、釣果として記録する上では12cmを超えるサイズのみ計上することにします。

その基準で今シーズンの釣果を集計してみると、何と89匹!!今年はアマゴ無しで、すべてイワナでした。昨シーズンは12cm以下を含めても17匹だったことを考えれば、これはもう、腕を上げたと勝手に思っておくことにしましょう。

昨年の5倍以上の釣果があった理由は、二つ思いつきます。

一つ目は、イワナがいそうだなというポイントが何となく分かるようになってきて、小さなポイントにも丁寧に毛鉤を入れるようになったことでしょう。まあ、そのために相変わらず13cmとか14cmという小さなサイズも釣ってしまうわけですが、時には小さなポイントでも20cm超えのイワナを釣ったこともあるので、やはり丁寧に釣っていくことは大切だと思いました。

二つ目は、川を静かに歩けるようになったこと。昨年と比べて、ポイントに近づく前に魚に走られてしまったという回数が、圧倒的に減りました。昨シーズンを終えた段階では、ポイントに近づこうと思っても魚に先に気付かれてしまうので、射程距離の短い3.3mの竿では限界があるなあ、と考え、シーズン前に最長6.1mの渓流用ズーム竿を購入し、シーズン当初はその竿を使って滝壺など身を隠す場所が少ない所で何匹が釣ることができました。

しかし、釣行を繰り返すうちに歩き方も上達したのか、今年は思っているほど魚が逃げないなあと感じ始めたので、途中からは6.1mの出番はほとんどなくなり、釣行の99%は、3.3m竿+ライン3m+ハリス1mくらいの組み合わせで釣ることができました。

ちなみに後半は、ライン2.8m+ハリス0.9mくらいの短い仕掛けが多かったです。これは、魚が毛鉤にかかっても、頭上に枝が覆い被さっている場所が多くてランディングネットに魚を取り込むまでの竿さばきが上手くいかず、もたついている間にバーブレスフックから魚が外れて逃げられてしまったということが20回くらいはあったため、少しでも糸を短くして竿さばきを簡単にしようと考えたためです。

それにしても、今シーズンも大イワナと言えるようなサイズのイワナは釣れなかったなあ~ 何度か姿は見たのですが、いずれも、毛鉤を入れようとした時には姿を消している・・・少なくとも3年以上は生きているだけあって、賢いんですね。大イワナを釣ろうと思ったら、今までのアプローチの仕方では通用しないのだろうなあ。

で、そんなことを考えながら谷を下りて、とある小さな滝壺(幅2~3m、深さ30~50cmくらい)に到達しました。下りる時は竿をしまっており、釣る気もないのでドサドサと歩いても良いのですが、静かに歩く癖がついたせいか、その滝壺を下りる時にも知らずにそっと下りていたようです。

すると・・・静かに歩いていた私に直前まで気づかなかったのか、滝壺にいたイワナが驚いて、浅瀬に飛び出してきました!しかも大きい!

イワナは慌てふためいて滝壺に戻ろうとしますが、何しろ体高の半分くらいしか水深がない浅瀬に飛び出してきたので、うまく移動できないようです。私はランディングネットを持って、そのイワナをすくい上げました。 

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いや~何と大きい!こんな風に慌てふためいて飛び出してきたイワナを捕獲したのは、実は初めてではないのですが、こんな大きなイワナは初めてです。 

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ここで、この日8匹目に釣っていた19cmのイワナの写真が登場。先ほどすくった大きなイワナと、ほぼ同じ縮尺になるように写真を並べてみます。 

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いや、デカい!何と28cmありました!これまでの釣果としての最大サイズが23cmだった私にとって、28cmというサイズはもう異次元です。28cm(8寸5分)でこれだから、「尺」なんていうのはとんでもないイワナなんだろうということが分かります。

これはもう、最終日に川の神様か魚の神様が、「最後くらい大きいイワナに会わせてやろう」と思ってくれたにちがいない!持ち帰って家族に自慢したいのは山々ですが、これを持ち帰ってはバチが当たると考えて、そっと滝壺に戻しました。

神様が会わせてくれた、と言えば聞こえがいいですが、実際には、産卵シーズンを迎えて移動中の♂イワナに、たまたま良い場所で出会ったのだと思います。

いずれにしても、忘れられない思い出となって最終日を迎えることができました。あらためて、川の神様と魚の神様とその他諸々の神様に感謝をしたいと思います。今シーズンもありがとうございました!