Forest and River

森のこと、川のこと

初めての谷は期待半分、不安半分

愛知川で私がテンカラに行けそうな谷の数は、35ほどあります。昨シーズンから数えて、これまで18の谷に竿を振りに行きました。

初めての谷に入る時は、たくさん魚がいるかもしれないと考えて毎回ワクワクしますが、それと同じくらい不安なことも確か。いきなり越えられない滝があるかもしれないし、ブッシュがひどくて竿を振れないかもしれません。

それでも、やっぱり初めての谷に入る時は、期待感の方が上回る!今回は、久しぶりに御池川水系の新しい谷に行ってみました。

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まずは御池川を渡渉。神崎川や茶屋川とはまた違う美しさがあります。

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初めて入る谷の入口。岩が多く、両岸が切り立っています。これは苦労するかも・・・ 

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谷に入ってまず目に付いたのは、非常にたくさんのイワタバコの花。今ちょうど花の時期で目立つためかもしれませんが、これほどたくさんイワタバコが生えている谷は初めての気がします。しかも、ひとつひとつの株の花付きが良い!写真に撮るのに良さそうなイワタバコをどれにしようかと選り取り見取りの中、遡行していきます。 

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谷の入口から受けた第一印象に反して、特に問題なく上っていけるので、最初から竿を出して毛鉤を入れていったのですが、ここまでひとつの魚影も見られず、毛鉤への反応もなし。 

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岩が多いので、調子の悪い膝をかばいながら岩に手をかけてヨイショッと上って行くのですが、あやうくこのカエルの上に手を乗せるところでした!

カメラを近づけても岩にへばりついているようにじっとしているのはカジカガエル。鳴き声がとても美しい渓流のカエルです。鳴き声は聞いたことがありましたが、姿は初めて見ました。 

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こんな、いかにもイワナがいそうなポイントも多数あるのですが、まったく反応なし。遡行しながら、心の中では「この谷にはイワナいなさそう・・・」と感じているのですが、「もしや・・・」という期待感だけが竿を振らせます。 

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この谷にイワナいなさそう、と感じた理由は何なのだろうと考えながら上っていると、まず河床が岩むき出しの場所が多いこと。何となく、こういう河床でイワナを釣った記憶がありません。そしてもう一つは、上の写真右側のように最近土砂が堆積している場所が多いこと。おそらく大雨時の増水で、一気に土砂・砂利と水が流れてきて、溜まるべきところに溜まったのでしょう。川にとって土砂の供給は必要ですが、こんな大量の土砂が一気に流れていく川では、魚は生きにくいでしょうね。 

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う~ん、いいポイントに思えそうなんですが、少なくともテンカラではダメでした。イワナがいたとしても、エサ釣りで沈めないとダメかな・・・ 

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この谷は、沢登りをするなら楽しめそうです。が、竿を持って写真のような場所に来てしまったら・・・途方に暮れてしまいます。どうやって越えようかなあ? 

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幸い、すぐに迂回ルートが見つかり、そこには昔付けられたロープまでありました。もちろんロープ信用できませんが・・・これは越えて上から見たところ。

それにしてもなぜロープが?そんなにたくさん人が入っているような谷には見えませんが・・・ 

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すると、突然こんな構造物が!なるほど、集落に水を送るための取水堤ですね。この堤の管理のためにロープがあったんだ。

もし、この谷にイワナの稚魚放流がされているとしたら、この取水堤を越えてから放流を始めるでしょう。ということは、この上からは期待できるかな!? 

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すると、天然のウォータースライダーのような流れが。やっぱり沢登り向きかな・・・ 

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かなり上ってきました。じつは、ここに至るまでの間にも、上の写真のような場所に出会う度に魚影はあったのです。それも非常に多くの魚影が。しかし、どうみてもイワナではないし、アマゴでも無い。タカハヤじゃなかろうか・・・と思いながら、毛鉤を投げると、着水地点に一斉に5~6匹の魚が群がります。しかし、喰わない。いや、何度も喰おうとしているのですが、喰えないのかな?

この日使ったフックは、私の定番TMC103BLの#13。このサイズは、タカハヤの口には大きすぎるのでしょうか。それでも、実際に釣ってみて、本当にタカハヤか確かめたい気持ちもあったので、合わせ勝負とばかりに喰ったかどうかのタイミングで素早く竿をあげて口にひっかける作戦をとると・・・

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やっぱり!タカハヤですね。以前タカハヤを釣った時に、この魚を素手で触るととんでもないことになる(ヌルヌルがとれない!)と知ったので、一切触らず写真だけ撮ってリリースしました。

ちなみにここは標高500m付近。こんなところまでタカハヤがいるのですね。

この谷は、谷に入ってしばらくは両岸が急峻で落葉広葉樹林に覆われているのですが、途中から少し傾斜がゆるくなり、2枚上の写真のように人工林に変わります。そしてさらに上ると、また落葉広葉樹林が見えてきたのですが、そのあたりでようやく2匹のイワナの姿を見ました。しかし倒木が多くて毛鉤を入れられず、何とか1匹かかったのですが倒木や枝の覆い被さりで竿のコントロールがうまくできず、またもやネットイン前に針が外れて逃げられてしまいました。 ああ下手くそ・・・

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そして上の写真のところでついに折り返し。釣行18回目にして、とうとう釣果0の日がやってきました。でも自然相手の釣りですから、こういう日もあります。0を気にしていては新しい谷には入れません。この谷にまたいつか来るなら、途中は竿を出さすに、どんどん上へ行ってから竿を出すべきだと分かりました。 

今回は釣果こそ0でしたが、「何となくイワナいなさそう・・・」と感じたことがあながち間違いではなかったことが分かり、またそう感じた理由として河床が岩むき出しであったり、最近大量の砂利(砂ではなく)が流れた形跡があったことなどは、今後の参考になるかもしれないなあと思うことにしました。

タカハヤがいる場所ではイワナが釣れない(いない)ということも言えるかもしれませんが、昨シーズン茶屋川水系では、タカハヤのいるポイントでイワナを釣ったことがあるので、そうとも言えない。しかし、今回ほどたくさんのタカハヤがいるような場所では、イワナがいても釣れないだろうなあと思いました。

前回の釣行では、谷を下りる時に悪あがきの釣り下がりで1匹釣れましたが、今回は釣り下がろうにもイワナがいないので、さっさと竿をしまって谷を下りました。

車にたどり着き、今日は残念だったなあ~と思いながら車を運転していると、突然目の前に白い大きな生き物が!何とニホンカモシカ

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じつは6月末にも、この付近の道路でカモシカと遭遇しているのですが、その時に出会ったのは全身灰褐色で、崖の上に登っていってしまったためちゃんと写真を撮ることができませんでした。

しかし今回は、白いカモシカが道路を横断して対向車線に行き、そこから道ばたの木が茂る場所でのんきに葉っぱを食べ始めたので、車を停めて車中から写真を撮ることができました。上の写真、こちらにおかまいなしに木の葉っぱを食べているところです。

鈴鹿の生き物に詳しい人に聞くと、鈴鹿の山には以前たくさんカモシカがいたが、最近はほとんど姿を見なくなったとのこと。よく言われる原因は、縄張りを持たず食べ物のある場所を移動し続けるニホンジカが増えすぎて、縄張りを持って暮らすニホンカモシカの生息場所が浸食されているからだろうということ。

そんなニホンカモシカに、2ヶ月足らずの間に2度も出会うとは!シカのせいで生息場所をおかされて、人里近い道路まで下りてきているのですね。

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シカと違って、ニホンカモシカは人に出会うと立ち止まってこちらをじっと観察します。カモシカが対向車線でのんきに葉っぱを食べている間に、車をUターンさせて5mほどの距離まで近づきました。こちらをじっと見つめ、やがて去って行きました。

初めての谷、釣果0でしたが、最後にいい出会いがありました!