Forest and River

森のこと、川のこと

滝を越えれば、きっと・・・

膝の調子も少しずつ良くなってきたので、テンカラ復帰2回目は未踏の谷に行くか!と張り切って出かけたものの、やはり無理は禁物だということを、今回身をもって知ることになってしまいました・・・

4月にちょこっと行ってみたこの谷は、愛知川の上流部 御池川水系の谷のひとつ。

4月には、谷に少し入ったところで大きな滝に遭遇し、「この滝は、かなり巻かないと越えられそうにないな・・・」と考えて、その日は断念しました。けれどこの時、滝に遭遇する前のわずかな区間だけで、2匹もイワナが釣れた!

滝を越えるためには、かなり急斜面を登っていかないといけないのですが、この滝を越えればきっとイワナたちがいるはずだ!と根拠の無い期待を膨らませながら、斜面を登っていきました。

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こちらは急斜面を登る前に遡行した、御池川本流の様子。いい天気、いい川です。本流には大きなイワナやアマゴがいるのでしょうが、私のテンカラの腕では、まだ本流で釣れる気がしません。でもいつか挑戦してみたいです。

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さて、急斜面に取り付きます。登山道はもちろん無いので、登れそうな場所を探しながら進みます。途中、こうした草花がひっそりと咲いているのに出会うとうれしくなります。これは小さな白い花を咲かせるツルアリドウシですね。

今回迂回しようとしている滝の周辺は、岩の露出したかなりの急傾斜で、これはとても登れそうにありません。そういう急傾斜地には、さすがにスギなどの植林もされていないため、落葉広葉樹などが茂っています。

ごく単純に言ってしまえば、渓流の周辺を落葉広葉樹が覆うような谷は傾斜がきつく、釣り上がっていくのにある程度の苦労が必要で、スギやヒノキなどの植林に覆われたような谷は、比較的傾斜がゆるくて上るのは楽です。

しかしそれは地形だけの話で、楽しみながらイワナを釣るということを考えたなら、私は圧倒的に落葉広葉樹林に覆われた渓流の方が好きです。第一に、樹林が美しい。第二に、植林地よりイワナが多い(気がする)。第三に、結果的に植林地の渓流より歩きやすい。

第三はどういうことかと言うと、手入れされている植林地の渓流なら、とても歩きやすくて良いのですが、残念ながら大半の植林地は手入れが十分でないため、倒木や折れた木が谷に折り重なっていたりして、歩きにくいわ、竿を振れないわでイライラします。特に嫌なのがスギの落ち葉。ツンツンとがったスギの葉は、ラインやハリスにからみやすくて、からんだ後ほどくのも一手間かかります。それを考えると、多少上るのに苦労がいっても、結果的に落葉広葉樹林の方が歩きやすいなあと思うのです。

さて、今回は滝を迂回するために、まずスギの植林地の中に入りました。渓流の流れが聞こえなくなるほど迂回して、植林地の急傾斜を上っていきます。この植林地は比較的手入れされているほうなので、手入れのための踏み分け道も残っています。ただこの踏み分け道は、あくまで植林の手入れのための道なので、これをたどって行って渓流に降りられる保障はありません。随時渓流の方角を確認しながら上っていきます。

かなり斜面を上ったら、少し水の音が聞こえてきました。地形図とGPSで現在地を確認すると、もうすぐ滝の上に出られそうです。木々の隙間から、少し水の流れも見えます。

ここで欲が出てしまいました。今いる植林地を少しそれて、水の方に向かえばすぐに滝の上に出られるのでは?地形図を見ても出られそうです。しかしそのためには、傾斜のきつい落葉広葉樹林帯に入っていかねばなりません。一方、このまま植林地を抜けようとすれば、この先さらに植林地の斜面を上って尾根を越える必要がありそうです。

どうしようかなあ・・・?

だいたい人間は、こういうときに判断を誤るものですね。私もこの先に待っているイワナに早く会いたい気持ちに負けてしまい、落葉広葉樹林を抜けることを選んでしまいました。

植林地から外れ、ところどころに岩が露出するかなりの急傾斜に取り付きます。滝の方向までどのルートを通るか見定めながら、少しずつ進みます。しかし何度経験しても、5m先から見て「行ける!」と判断したルートが、いざ1mまで近づくと「これはとても行けそうにない・・・」と気付くことが多い。今回もそんな場面が多数あり、進んではルートを変更し、また進んではまた変更しと繰り返すことになってしまいました。

それでも徐々に、滝の上には近づきつつある。しかし傾斜はきつくなる一方で、完治していない膝を引きずりながら緊張感を絶やすことのできない斜面歩きを続けて汗びっしょり。5m先から見ても、いよいよ取るべきルートがなくなってきました。これは無理かも・・・滑り落ちると一気に下まで・・・やむを得ず、植林地まで戻りました。「急がば回れ」とはよく言ったもので、かなりの時間を無駄にしてしまいました。

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植林地の尾根を越え、ようやく滝の上の谷に降りられました!1時間もかかってしまった。すでに膝は酷使状態でガクガク・・・その膝の痛みを吹き飛ばすほど、滝の上には楽園が広がるか?

この滝の上は、落葉広葉樹林ではなく植林地が広がっています。このことは、釣行前にGoogleマップで確認済みですが、この地域の植林地はある程度手入れされているのを知っており、またイワナの稚魚放流も行われていることを知っていたので来たのです。

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岩の上に淡い青色のミズタビラコの花。ちょいピント合わず。

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こちらはヨウシュヤマゴボウ(北アメリカ原産)にそっくりなヤマゴボウ(中国原産)。山の中でひっそりと。

さて、肝心のテンカラです。ようやく川に降りて竿を出します。水量も多く、ポイントは多そう。深みのあるポイントも多く、ビーズヘッドと普通の毛鉤をこまめに交換しながら竿を振っていきます。

釣り初めてすぐに、1匹かかった!しかし取り込みに手間取ってしまい、あえなくバーブレスの針から外れて逃げられてしまいました。谷に降りるまでに酷使した膝に力が入らず、取り込む時に足場が決まらないであたふたしている間のことでした。やはり無理がたたったか・・・

その後、少し上流に行ったポイントでさらに1匹!20cm以上はある大きさです。しかし何と、このイワナも取り込み失敗!上流で釣ったイワナ下流にリリースしてしまいました。いや、今日はダメだな・・・

膝も痛いし、帰り道に再び急斜面を降りることを考えると、早めに帰ろうかな・・・と頭の隅では考えつつも、あとひとつポイントを攻めよう、もうひとつ攻めようと際限なく上流に進んでしまうのがテンカラ士の性。

この谷、イワナの天国と言うほどではありませんが、確かに魚影はあります。この後、さらに2匹かかったのですが、何と2匹とも取り込み失敗!こんなに失敗したのは初めて。もうどうしようもない。 

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まあ膝の調子が悪かったせいもあるのですが、今回一番やっかいだったのがこのクモの巣。良いポイントに限って、実に立派なクモの巣が張られているのです。軽い毛鉤と0.8号の細いハリスは、簡単にクモの巣にからめとられてしまいます。竿先で巣を払うほど近づくと魚に逃げられてしまうし・・・やむを得ず、クモの巣をひっかけて取り去るつもりで3,4回毛鉤を投げ、毛鉤やハリスにからみついたクモの糸を取り除いてようやく水面に毛鉤を入れるということの繰り返し。 

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ご覧のように、植林と広葉樹が適度に混ざったきれいな谷です。この後も魚影は見るものの、釣れない・・・そろそろ引き返すべき時刻です。ああ、今シーズンは11回テンカラに行ってボウズなしだったのになあ・・・ついに12回目の今日はボウズか・・・今回は完全に私の腕のせいなので、仕方ありません。

帰路は、おとなしく植林地の中を帰ります。行きは横道にそれたばかりにあれほど苦労したのに、帰りはスムースです。やはり「急がば回れ」ですね。

やがて、迂回した滝の下流までやってきました。4月に来た時は、ここから川に降りて滝までの間で2匹釣ったので、今回も挑戦してみようかなと思ったのですが、もう予定の時間を過ぎています。でも、せっかくここまで来たからちょっと谷に降りてみようかな、いやでももう帰らないと・・・と、さんざん迷ったあげく、結局谷に降りることに。

おお、やはりここはイワナがいそうな雰囲気。収めた竿を再び出して、毛鉤をつけます。そしてポイントに投げると・・・

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やった!今度はうまく取り込みできました!15cmのきれいなイワナです。

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そして今回迂回した滝の滝壺へ。前回もここで1匹釣りました。さあ、今回はどうかな・・・ 

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おお!また釣れた!立派な19cm。予定時間を大幅に過ぎたので、2匹ともリリースして急いで帰りました。

やっぱり、ボウズよりは1匹でも釣れるとうれしいものですね。それにしても膝が痛い・・・また悪化しないと良いのですが。こんな膝の状態で源流に入るなんて、もはや完全に重症のテンカラ病になってしまったようです。