Forest and River

森のこと、川のこと

渓流撮影行3(素人の推論)

秋も終盤になると、季節の移り変わりが加速します。渓流では、先週(11/12)までまだ残っていた紅葉が、1週間経つとほとんど散りました。私の働く平地の森では、紅葉はまだまだこれからです。

とは言え、葉の落ちた山の風情も好きなので、今週(11/19)もまた渓流に写真を撮りに行きました。

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落葉樹の葉はほとんど落ち、地面は落ち葉で埋め尽くされています。絶えず水が流れる川だけが、渓流に来ていることを証明するのみ。

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川から少し斜面を上がると、水の音が絶えて静かな森になります。日当たりの悪い林の中では、まだかろうじて紅葉する葉をつけた木があります。

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真っ赤な実をつけたマムシグサの仲間。有毒です。でも、美しい。

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さて、今日もイワナの姿を探します。禁漁シーズンに入ってから、写真撮影のために谷に入るのは今回で3回目。毎回、異なる谷に入ってきました。イワナを見つける「眼」も少しは良くなってきたので、この日も入渓して早速1匹目を見つけました。写真の中央に、頭を右に向けて泳いでいる小さなイワナがいますが、どれか分かりますか?

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少し上流にのぼると、またいました。さっきより少し大きい。

この後も、上流に向かうたびにイワナの姿を見ましたが、この渓流の川面は水面が結構波打っていて、ろくな写真が撮れないので出会った魚を全部撮るのはあきらめました。イワナの姿は10匹近く見たと思いますが、1週間前に違う谷で見た時のように、ペアがいません。すでに産卵シーズンが終わったのでしょうか?産卵後のイワナがペアを解消するのかどうかの知識もありませんので、残念ながらこの状況を解説できません。

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しかし、ひとつ思い当たることがあります。上の写真は前回、4匹のイワナが一堂に会していた場所。絶好の産卵場所だったのでしょう。写真の右側から左側に向かって水が流れています。この写真と、今回行った谷のよく似た場所の写真を比べてみます。

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それがこちら。実際には、右岸から撮影しているのですが、先ほどの写真と比較するために、写真の左右を反転しています。つまり、この写真も右側から左側に向かって水が流れています。

両者ともに言えるのは、一番右端に段差があるので、流れてきた水が落ちることで、その直下が掘られていきます。落ち葉が溜まっているところが深いところ。そこから流れるに連れて、土砂が緩やかに滞積していくので、水深は徐々に浅くなっていきます。ここまでは、上と下の写真はよく似ています。

しかしここからが違う。上の写真は、水深が浅くなっているところに堆積しているのは、写真で見ても分かるくらいの礫です。イワナはこういう礫のところに産卵します。しかし下の写真では、そこに粒の細かい砂が堆積しています。砂の中に産卵しても、隙間が少ないので酸素の供給が十分でなく、たぶん卵が死ぬのでしょう。また、砂はちょっとした大雨の流れでも簡単に動くので、卵が流されやすいのでしょう。

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参考までに、下の写真の砂のような場所をすくってみました。写真で見ると、砂と言うほど小さな粒でないように見えますが、川からすくいあげて写真を撮る間に、砂くらいの小さな粒はサラサラと流れ落ちてしまうのです。

素人の推論で言うと、この川はもろい花崗岩が多くて、どんどん崩れてきており、細かい砂が堆積しやすくなるため、イワナの産卵場所には向かない環境になっているのではないか、ということです。

もちろん、花崗岩が多いというだけの理由では無く、川周辺の植林された山林の手入れ不十分による林床への日照不足が起こり、下層植生が育たず、大雨時に土砂が流出しやすくなているのではないか、また、下層植生があったとしても、大量に生息するようになったシカの影響で、土砂の流出を食い止めるはずの植物が食べられてしまっているのではないか、あるいは、近年の雨の降り方が過去に例がないほど異常で、土砂を食い止める力より土砂を流出させる力の方が上回ってきたのではないか、などが想像できます。いや、根拠はありませんが。

今回ペアを確認できなかったのは、私の探し方が悪かったから・・・それも可能性としては十分あります。何しろまだまだ渓流の歩き方もなっていませんから。しかし、先週イワナを撮影した時と少し様子が異なることは、先週はイワナの居場所に近づいたことで一旦イワナが隠れたとしても、5~10分も粘れば姿を見せてくれ、さらに粘ればペアも出てきてくれたのです。しかし今回は、一旦隠れたら、なかなか1匹目が出てきてくれない。まるで釣りシーズンの時のようです。早くても15分以上待って、ようやく1匹出てきてくれる感じ。そこからさらに待っても、もう1匹は現れず。つまりこれも推論するに、このイワナは産卵行動ではなく、通常の単独での採餌行動をしているのではないか、ということです。

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その推論の証拠に、今回の谷でたぶんペアと思われる2匹を見たのがここ。

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残念ながら、近づいた時に2匹がさっと落ち葉の下に隠れてしまい、ペアであることを証明する写真は撮れませんでしたが、10分待つとやっと1匹が出てきてくれました。もう少し待ちたかったのですが、この時すでに山中で15時でしたので、あきらめて谷を下りました。

「推論の証拠」とは何のことかと言えば、上の写真の河床です。ここは砂ではなく、礫が堆積しています。

とまあ、今年から渓流釣りを始めたばかりのど素人が何を分かったようなことを・・・と我ながら思いますが、無責任にこういう推論をするのも楽しいものなのです。 

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最後にこの日のお気に入りのイワナ。落ち葉が積もる川底の上で楽しげに泳いでいます。なぜ楽しげだと判断したか?そこは、素人の推論ですよ。