Forest and River

森のこと、川のこと

台風後の渓流へ

9月4日の台風21号以来、しばらく渓流に行けませんでしたが、9月18日、19日の両日、久しぶりにテンカラをしに行きました。

私の勤める森にも大きな被害をもたらした台風21号。きっと山にも大きな被害をもたらしているのでは・・・と思いながら行きました。

まずは18日。通い慣れた谷へ行きました。

f:id:forest_and_river:20180920222619j:plain

秋雨前線の合間をぬった束の間の晴れ。だいぶ秋らしくなってきましたが、この日は気温は25度、水温は20度もあり、まだまだ魚には残暑厳しいといったところです。

f:id:forest_and_river:20180920222916j:plain

台風被害は思ったよりずっと少なかったです。写真のように、岩盤に生えていた根の浅い木が根元ごとひっくり返っているという姿を何本か見かけたものの、あちこちでひっくり返っているという様子ではありません。ましてや、私のいる森で見かけたような、大木が幹の途中からへし折れるという木は1本も見なかったです。

f:id:forest_and_river:20180920223151j:plain

途中、湿地状になった場所に小さな花がたくさん咲いていました。家に帰って調べると、エダウチスズメノトウガラシという野草。特に珍しいわけではないのですが、初めて聞いた名前の花でした。

f:id:forest_and_river:20180920223341j:plain

そして林道を歩いていると、ものすごく久しぶりにハンミョウに出会いました。子どもの頃にはよく見かけましたが、最近は見ることもほとんど無かった・・・

ハンミョウは人が近づくとすぐに飛び去るので、望遠レンズが無いと写真に撮るのが難しいですが、今回はOLYMPUS TG-5の望遠側(35mm換算で100mm)で撮影に成功。テンカラで魚に気付かれず忍び寄る技(?)が役に立ったかな?それにしてもハンミョウはきれいです。

f:id:forest_and_river:20180920223943j:plain

さて、肝心の魚は・・・川を行けども行けども魚影無し。しかし写真のような小さなポイントにもあきらめず毛鉤を入れていったら・・・

f:id:forest_and_river:20180920224101j:plain

おっ!小さいけどイワナ!14cmしかありませんでしたが、美しいイワナでした。1匹でも釣れればいいんです。また来年会えるように!

さて、翌19日もテンカラへ。今回は初めて行く谷です。

初めての谷は期待が6割、不安が4割。さてどうかな・・・

f:id:forest_and_river:20180920224332j:plain

きれいな谷でした。少し木が覆い被さるところが多いので、テンカラ初心者には竿を振るのがかなり難しい。でも、この半年でこういう谷にもだいぶ慣れてきたので、今回は1本も木に毛鉤をとられませんでした。

f:id:forest_and_river:20180920224641j:plain

今回、初めて黄緑色の糸で巻いた毛針を使いました。バッタのイメージ。ちょっと鮮やかすぎるかなとも思ったのですが、木が覆い被さる暗い渓流ではこんな鮮やかな色の方が魚が興味を示すかな?と思っての選択です。

f:id:forest_and_river:20180920224908j:plain

この日は気温23度、水温は18度。ようやく、魚にも良い条件になってきました。しかし、相変わらず魚影は少ない・・・ほとんど姿が見えません。シーズンも終盤、ほとんど釣り上げられてしまったのでしょうか?けれど粘り強く、写真のような小さな落ち込みにも入れると・・・

f:id:forest_and_river:20180920225137j:plain

やった!イワナ16cm。相変わらず小物しか釣れませんが、このきれいな姿にしばし見とれてからリリースしました。

さらに釣り上がると、この直後にもう1匹!しかも大きい!

まあ、私にとって「大きい」とは20cm超えのことですが。グンと引き応えのある重さ。しかし上下左右は木の枝だらけ。慌てて竿を上げると枝に当たります。バーブレスフックなので、テンションを緩めれば魚は逃げてしまう。しかしこういう場面でも、ゆっくりテンションかけながら、頭上で竿を上げられそうな場所を探す余裕が出てきました。

テンションを維持しながらゆっくり竿を上げます。魚の姿が見えました!立派なイワナです!ランディングネットで受け止めて、ついにゲット!針を外してあげようと竿を寝かしたら、何と竿先の糸が細い枝に引っかかった!早く魚を水に浸けてあげたいのに、枝に糸がからんで魚を地上に下ろせません。仕方無いので、空中で針を外してあげ、ランディングネットに入れ、水に浸けてあげました。その間に竿先の糸を枝から外して・・・さあ何cmのイワナかな?とわくわくしてネットをのぞくと・・・いない!えっ?なんで!?

まるで手品を見せられたかのような気分。いったいどこから逃げたのか・・・おそらく、大きなイワナは泳ぐ力も強いので、ネットを水に入れた途端に思いっきり泳いで出てしまったのでしょう・・・

山の中で、「あ~っ!」と思わず叫んでしまいました。逃がした魚は大きいと言いますが、私の今までの最高記録が22cmだったことを考えると、間違いなく記録更新サイズでした。本当に残念!

気を取り直して、さらに釣り上がると・・・

f:id:forest_and_river:20180920230941j:plain

高さ12mくらいの大きな滝に出会いました。これは高巻きできそうにないな・・・と思いながらも、よ~く観察すると急斜面に獣道らしき跡が・・・思い切って登っていくと、案外上まで行けます。この調子なら滝の上まで行けそうだな、と思いながら、滝上まであと5mほどの距離になったのですが・・・そこから先は、手につかめる木もなく、足を滑らせれば12m下まで真っ逆さまの、幅20cmくらいの踏み分け道があるのみ。これはどうしたものか・・・

滝の上の流れが、すぐそこに見えています。ここを超えれば行けるのですが・・・

やはりやめました。潔く引き返します。決して無理な場所ではなく、8割くらいの確率で通る自信はあったのですが、残りの2割で足を滑らせれば死にます。命がけで行けと言われる場面でなら行きますが、ここで命をかける必要はまったく無い。

テンカラを初めて半年。ここで滝を越えない自分の限界が、20cmのイワナを大物と言っているレベルなんだろうなあと思いつつ引き返しました。でも死んでしまっては何にもなりませんからね。

さて、滝を引き返したことで、少し周りの森を探索する余裕ができました。

f:id:forest_and_river:20180920232352j:plain

やせ尾根に生えているにも関わらず、非常に複雑な根の張り方をしているおかげか台風でも倒れなかったスギの大木に出会ったり・・・

f:id:forest_and_river:20180920232506j:plain

きれいな三つ叉で生えているカツラの巨木に出会ったり・・・

f:id:forest_and_river:20180920232539j:plain

一番驚いたのはこの太いフジのツル。こんな太いのは今まで見たことがありません。

f:id:forest_and_river:20180920232628j:plain

これ!ツルですよ!すごい太さ!

滝を登らなかったことで、良い出会いがあった、ということにしておきましょう。

それにしてもあの20cm超えのイワナ・・・何で逃がしてしまったんだろう。ああ残念!