Forest and River

森のこと、川のこと

桜の思い出

11年前、私の父親は66歳で肺癌で亡くなりました。

癌と分かった時にはすでに4段階のステージのうちⅣ。つまり末期でした。

 9月に癌と診断され、12月にはもう痩せていくばかり。何とか年を越しましたが、食欲・体力・気力共に失せていく一方でした。それでも1月、2月、3月と時が過ぎましたが、自力で歩けなくなって車いす

当時まだ滋賀病院と称していた現・東近江総合医療センターに入院していました。看護士さんに車いすを押してもらいながら院内を移動すると、2階の窓から外の景色が見えます。

3月も下旬になったある日、父親は窓から桜の木が見えることに気付きました。

医療センターの前は見事な桜並木で知られていますが、窓から見えるのはその並木ではなく、敷地の東側にポツンと1本だけ立っている立派な桜。

父親は看護士に、あの桜が咲くのを見てみたいなあと言っていたそうです。

4月、父親は液体の栄養食さえ摂るのもしんどくなりましたが、そんな時にその桜に花が咲きました。数日後、見事に満開の花が咲くと、看護士さんが車いすを押してその桜の木の下に連れて行ってくれ、ちょっとした食べ物を用意して「お花見」をさせてくれたそうです。父親は、私にそのことを嬉しそうに話してくれました。

それからひと月余り経ち、父親は亡くなりました。

毎年桜の時期になると、その時のことを思い出します。

昨日、仕事から帰宅する時、ふと思い立って医療センターのあの桜に会いに行きました。

父親が最期に見た時のように、見事な満開の花が咲いていました。

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