尺超えのイワナ
大きな魚を釣ることは、釣りをする者にとって喜びになることは間違いないでしょう。「大きな魚」の基準は、魚種によって異なりますが、渓流魚の場合「1尺(30.3cm)」がひとつの目標になると言えます。
私のテンカラの腕前では、尺サイズなど夢のまた夢、通常6寸(18cm)から7寸(21cm)で、これまで8寸(24cm)を超えたことはありませんが、それを不満に思ったことはありません。だってこれらのイワナは、個体ごとにパーマークや白点、オレンジ色の現れ方が異なり、それぞれに美しいのです。
それでも、18cmより19cmが釣れた時はうれしいし、21cmより22cmが釣れたらもっとうれしいのが正直なところ・・・
こうした中、2018年から釣行65回目を数えた今回・・・山の神様か川の神様か、はたまた魚の神様の思し召しで、ついに尺、いや尺超えのイワナを釣ることができました!
今年はなかなか休みがとれませんが、先日、ようやく今期2回目のテンカラに行くことができました。悪かった膝の調子も戻ってきたので、久しぶりに少々キツい渓流に入ることにします。
ああ~、やっぱり渓流はいい!今年は春の訪れが早く、下界では入学式を待たず早々に桜(ソメイヨシノ)が散ってしまいましたが、山の中はまだまだ早春の雰囲気です。
入渓後しばらくは竿を出さず、まずは越えないといけない急登と危険なルートを踏破していきます。
四つん這いになって急斜面をよじ登り、足を踏み外せば一気に谷まで滑り落ちる場所を慎重に進んで、ようやく難所を切り抜けました。さて、竿を出して、毛鉤を選びます。今日は何となく春らしい(?)黄色にしましょう。
川の様子を見ながら、丁寧に探っていくことにします。すると・・・
おっと、いきなり!15cmと小柄ですが、美しい白点のイワナです。以後、ダラダラと釣ったイワナの写真が続きますが、1匹ずつ違う模様を楽しむための覚え書きのようなものです。
続いてすぐ近くで、2匹目!18cmと立派なサイズ。まだサビ色が残るかな。
それにしてもこの季節は寒くもなく暑くもなく、ヤマビルもスズメバチもいない良い時期です。ところどころにいろいろな花も咲いているので、写真撮影も楽しみながらのんびり釣り上がっていきます。
今回のブログから、先日購入したPanasonic LX-100Ⅱをメインカメラに使用しています。まだちょっとホワイトバランスの補正具合の加減が分からないので、多少色味が変な感じですが、撮影を楽しむ喜びも増えました。
さて、次はこんな落ち込みに黄色の毛鉤を入れると・・・
3匹目!これは立派な20cm!白点とオレンジ色がきれいです。
続いて少し上の落ち込みで17.5cm!こちらは白点があまり目立ちません。
さらに少し上で18cm!こちらは腹が白く、尾びれが大きい。いや~調子いいですね。既に5匹。今の時期、まだ食べ頃ではなさそうなので、今回もすべてリリースしています。
この辺りで、白い毛鉤にチェンジします。特に理由はありません。
白い毛鉤にも反応してくれるかな・・・というつもりで毛鉤を入れると。
20cm!立派なサイズです。
少し上で15cm。また模様ががらっと変わりました。
そして8匹目も15cm。白点が大きく、水玉模様のようにきれいでした。
さて、このポイントは大体いつもイワナが複数いる場所です。まずは手前の左、次は手前の右、そして手前の中央、次に真ん中の左右、そして真ん中、最後に落ち込みの辺りと、順番にさぐっていきます。
一投目、手前の左側に毛鉤を入れたら、早速小ぶりのイワナがかかったのですが、取り込みに失敗して逃げてしまいました。この後、中央に入れると、毛鉤を追う魚の姿があり、一瞬、毛鉤をくわえたのですが、合わせが早すぎたのか水面から上には出せず。
しかしこのイワナ、食い気満々に見えたので、ちょっと毛鉤にアクションを入れてみたら・・・
やった!立派な20cm!毛鉤にアクションを入れて釣れたのは初めてだと思います。ちなみに、白い毛鉤を、ツー、ツーという感じで水の流れに対して真横に横断するように動かしてみました。
この後、さらに上流に向かいます。だんだん流れも細くなってきました。
すると、この日10匹目となるイワナ!15cmと小ぶりですが、こちらも白点が美しい。
ちなみにこの10匹目、頭頂部まで模様が入っていて見事でした。たまにこういう個体を見ます。
10匹を釣って、大満足の成果。山ではいろいろな花が咲いていますが、上の写真は私が好きな早春の花、コバノミツバツツジ。淡いピンク色がとてもきれいです。他にもたくさんの花が咲いていましたが、それはまた別の機会に紹介します。
さて、肝心の尺超えイワナは・・・
10匹釣るまでの間に、かなり山奥に入ってきました。そろそろ引き返そうかな、もうちょっと行こうかな・・・引き際は、いつも迷います。でも今回は、まだ午後1時を過ぎたばかり。もう少し楽しむ時間がありそうなので、さらに上流へ行ってみました。
小さなポイントに毛鉤を入れて行きますが、反応なし。う~ん、そろそろ引き際かな。よし、最後にここに毛鉤を入れてみようと決めた場所は、落差4~5mの小さな滝が作った小さな滝壺。広さは2m四方くらい、深さはせいぜい膝下くらい。
小さな場所ですが、以前、ここで6寸前後のイワナを見ているので、最後に挑戦してみます。手前から攻めていきますが、反応なし。3投目で滝の落下地点に毛鉤を入れたら・・・
最初、根掛かりしたのかと思ったのですが、糸に動きがあるので迷わず引っこ抜きました。ベテランなら、糸が切れないようにじっくり攻めるのでしょうが、大物を釣った経験のない私には、そんな余裕はありません。とにかく引っこ抜くしか頭にありませんでした。
水面から釣り上げてみると、重い!そして、デカい!!こんなイワナはかけたことがないので、取り込みがうまく行きません。ブラ~ン、ブラ~ンと2回ほど振り子のように振り回した後、イワナが地面にドサッと落ちました。慌てて、ランディングネットで確保!
いや~すごい!写真を撮ろうとネットに入れて地面に置いたら、蛇のようにクネクネ動きながら逃げようとします。
改めて撮影。何という迫力!ランディングネットの大きさを超えてしまいそうです。パーマークがほとんど消失していますね。白点もほとんど見えません。知人の研究者に写真を見せたら、この地域の原種(白点がほとんどなく、体色が濃い)に近いのでは?とのことですが、原種を釣ったことがないのでよく分かりません。
弱らないように何度も水につけながら、ようやく計測テープの横に収まってくれました。その大きさは、34cm!!私にとってはもちろん初の尺サイズ、しかもいきなり尺超えです。
知人で、今年別の谷で35cmの天然イワナを釣った人がいますが、その人は超ベテラン、この地域の川を知り尽くしている人です。私が今回尺超えのイワナを釣ることができたのは、まぐれ以外の何ものでもない。こんな小さな場所に、まさかこんな大きなイワナがいるなんて想像すらできない者の幸運に過ぎません。
以前、地元漁協の組合長さんに聞いたら、「30cm以下のイワナは、愛知川にはそこそこいるだろうが、尺を超えるサイズになると途端に数が減る。」とのことでした。生涯でもう二度と、このクラスのイワナを釣ることはないかもしれないなあと思いつつ、感慨深げに尺超えイワナをリリースしました。
リリース後、帰り支度をしようとして初めて、竿の穂先が折れていることに気づきました。だからドサッと落ちたのですね。たぶん、私の竿の使い方が悪く、竿を垂直に立てすぎたのだと思います。
餌やルアーで、水の底から大物を引き出したという話はよく聞きますが、ビーズヘッドを付けないテンカラ毛鉤に、よくかかってくれました。ちなみにフックは、TMCの103BL、サイズは#13です。私はほとんどこのフック、このサイズしか使いませんが、このフックにわずか7cmのイワナが食いついたこともあるかと思えば、その5倍近い34cmのイワナが食いつくこともある。不思議ですね~
ラインは3.5号のレベルライン、ハリスは0.8号のフロロカーボンで、この日6匹目から使い始めた白い毛鉤とハリスをそのまま使っていたのですが、よくハリスが切れなかったと思います。
帰路は、今までにないような充実感を抱えて谷を降りました。これほどの大物を釣ったら、今度から6寸や7寸では満足できなくなる?そうかもしれませんが、でもそのサイズのイワナに見られるパーマークや魚体の美しさには、やはり今でも魅力を感じます。
しばらく仕事が忙しくなるので、当分渓流には来られないかもしれませんが、次回来た時には、また私にとってのレギュラーサイズを楽しむことにします。